今日学んだこと

読書感想文とか、勉強した内容とか

「ハッカーと画家」から何を学ぶか

世の中には2種類の人間がいる。

名著と呼ばれるものを読んで「ふーん」で終わる人間か、もしくはそこから何かを学び取ることができる人間だ。

僕は残念ながら前者である。

世の中には「ハッカーと画家」という名の名著がある。嬉しいことに日本語に訳され出版されている。

僕は数年前に読んだが、内容をほとんど覚えていなかった。Lisp讃歌な本だったという認識がうっすらあるだけだ。

世の中では名著とされており、少なくない頻度でTwitterやブログなどで読んだ感想や引用を見かける。

が、僕も読んだにもかかわらず内容をほとんど思い出せない。

今、本棚を整理するなんていうことをやっているんだけど、その中で改めて表紙と向き合ってみても内容を思い出せない。画家ってどういう意味だっけ? と。

そんな感じで、長いイントロになってしまったけど、また読み直してみたというお話です。

本の内容を3行でまとめると

  • オタク/ハッカーって凄いんだぜ
  • 色々なことに対して思考実験してみよう
  • Lisp最高

となるのかな、と思ってる。

エンジニア界隈で名著とされている本書だけど、コレを読んだからといって何か技術がつくだとか、そういう類の本ではない。技術書ではなくエッセイ集だ。

僕は読み物としてしか読めず、僕の力不足というか想像力不足のせいで、世の評判ほどこの本から何かを得ることはできなかった。

Amazonのレビューを覗いてみても

刺激的な内容だけに自分はどう考えるか、何をしたいかを考えざるを得なくなります。知らず知らずのうちに常識に埋もれて停止していた頭の中の歯車が回りだすような感覚です。

という人もいれば

著者の経験と主観的な主張が延々と述べられているに過ぎず、単なるエッセーである。論旨に客観性もなければ斬新な学びも無く、ここでの高評価の意味がわからない

と受け取った人もいる。僕はこの例のどちらほどにも極端ではなく、「読んでいて面白かった」という身も蓋もない中間的な評価だったりする。

僕はこの本から何を学んだか

そんな僕でも学びがなかったわけではない。3つほど挙げてみる。

何を言うにしても成功してなんぼ

3行まとめで「オタク/ハッカーって凄いんだぜ」とした部分について。

「学校ってクソだよね」とか「企業ってクソだよね」という論調の話が多い。そして、そういういわゆる「枠組み」がオタク/ハッカーを滅入らせるんだ という話だ。

僕が日本人だからそう思うのかもしれないが、何も成してない人が、たとえば「頭でっかちの上司(この本では"スーツ"という言葉を使っている)がクソで仕事にならないよ」と長々と述べたところで「人のせいにしてないで仕事しろよ」となると思う。

「気に食わないことの上を行った上で」懐古としてクソだよねと述べたり、「気に食わないことを打破しようとしている最中に」ぶっ潰すという意気込みとしてクソだよねと述べるのであれば共感を呼べる(この本は前者(懐古)だ)。

つまり、何かを批判する時は、成功してなんぼなのだと思っている。

僕も、特に仕事で気に食わないことが沢山ある。のちに、負け惜しみじゃない文句を言えるようになる日は来るのだろうか。そんなことを思いながら読み進めた。

思考を言葉にするのは難しいけど不可能ではない

3行まとめで「色々なことに対して思考実験してみよう」とした部分について。

たとえば「富とは何か」「世の中のタブーとされているものについて」といったものに対して著者なりの考察が書かれている。

こういったとりとめもないお題について、頭の中でぐるぐるさせることは、現代の人ならよくあることだと思う。僕の場合だと「理想の会社とは」とは「人口減少を食い止めるには」とか。

ただ、こういった思考はとりとめなくされるもので、たとえばそれを文章にまとめるとかになると途端に難しくなる。

それを、この著者はうまくやってのけていて(そして、著者の説が妥当に思える様な論調で)、なるほどこういうのを文章にすることも不可能ではないのか と感心させられた。

言語を愛してるエンジニアは強い

3行まとめで「Lisp最高」とした部分について。

経験則でもあるんだけど、世の凄腕エンジニアな人は、特定の言語に愛を持っていることが多いと思っている。逆に、「言語なんて何でも良いよ」なんて言う人は、稀に例外もあるが凡な人が多いとも思ってる。

似た様なことがエディタにも言えると思ってて、つまり自分の道具に愛を持っている人は強い/強くなる と思ってる。

そういう推測をこの本は補強してくれる。

この本の半分はLisp(の中でも著者はCommon Lispを好んでる)という言語の讃歌だ。そして、この本の著者は、少なくとも成功しているエンジニアだ(なお、現在はYコンビネータの代表をしていて、エンジニアというよりは実業家というような立ち位置だ)。

Lispって言語いいよね という捉え方もできるが、「僕も彼の様に、自分の道具を愛せているだろうか?」と自問しながら読み進めていった。

僕はこの本を人に勧めるか?

勧めるか否かを結論で言えば、勧める。

何故かというと、僕は「エンジニアの間で名著とされている本は、合う合わない考えずに読んでおいたほうがいい」と思っているからだ。

エンジニアが読む様な本というのは、知識を深めるという側面と、他の人と同じ情報/文脈を共有するという側面があると思っている。

議論のベースになることもあれば、相手が読んでいる前提で引用されることもある(「妊婦増やしたところで子供が早く生まれる訳ないのにね」「銀の弾丸なんてないのにね」といった人月の神話を基にした言葉を言われた/言ったことは一度はあるんじゃないだろうか)。

しかし、そういった名著にだって、人によって合う/合わないは当然ある。

僕は、この本は合わなくはなかったが、合ってるとも言い難かった。もちろん、絶賛している人は沢山いる。

合う合わないはあるにせよ、少なくとも小難しくて体力がいる様な本ではない。気軽に読める本である。

もし、まだ読んだことがなければ、この本から何を学べるか、ぜひ気軽に読んでもらえたらと思ってる。

読み終わった後に「Lispは良いぞ」と言ってくれることを願いつつ。